「出会いと別れ」
誰かとの出会いはとても不思議なものです。意図して誰かと会うこともあれば、偶然に誰かと出会って、そこから新しい何かが生まれてくることもありますね。そして、その関係も何十年も続くことあれば、そうでもないこともあります。そんな出会いにをテーマにしたエッセイを紹介します(2019年10月の記事になります。その当時は脳神経外科医として病院に勤務していました)。
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「先生、こんにちは。1年ぶりですね。」
「こんにちは、○○さん。久しぶりですね。この1年間の調子はどうでしたか。」
このように私の病院で治療を受けられて、その後、経過観察のため通院されている患者さんの中には1年に1度の方もおります。治療直後は3か月ごとに受診してもらい、その後経過が良好であれば、徐々に半年、1年と間隔が伸びていきます。
そして私は現在の病院で12年目の勤務になりますので、10年以上の長い付き合いの患者さんも増えてきました。
そういった長い関わりのある患者さんと、冒頭のような挨拶をしたり、診察の終わりには「また1年後に会いましょう」などと話したりしているとふと思うことが出てきました。
たった1年に1回しか会わなくても私はその患者さんの人生に関わっている。それでは、2年に1回ではどうだろう。3年に1回ではどうだろう。もしかしたら毎年診察することも10年ぶりに診察することも生涯に1回だけ診察することもその患者さんの人生に関わることとしたら同じではないだろうか。
そう思ったら「出会いと別れ」がテーマとして浮かんできました。
「出会いって いつまで続くのだろう。」
確かに出会うのは一瞬かもしれないけれど、その出会いは1年、2年、10年、もしくは、一生続くのだろうか。そして、その出会いはいつ終わるのだろうか。
それは、学校の卒業とか職場の転勤などの理由で、毎日会っていた人と物理的に会えなくなることが別れだろうか。ただ私はセミナーで出会った友人たちを思い出すとこれから物理的に会うことができないかもしれないけれど、それでも出会いはずっと続いていると感じているのですね。
もしかすると、一生に一度でも出会った人はその人のことを思い出すことがなくならない限り、その人と別れることにはならない(思い出す機会がある限り その人との出会いは続いていく。)と言えないだろうか。
この考えは、映画『リメンバーミー』に通じるものがありますね。(2018年3月に公開された映画「リメンバー・ミー」は1年に1度だけ他界した家族と再会できるとされる祝祭をテーマにしたディズニー/ピクサーによる長編アニメで、命の繋がりを描いています。https://www.youtube.com/watch?v=-9b9jireyKQ)
そう思うと、自分の人生で出会った人すべてが何らかの形で、自分の潜在意識に残っていて、自分の人生を彩っているのかもしれない。だから「人との出会いを大切に」と言われているのかもしれません。そうだとしたら、これからの人生ではもっとたくさんの人と出会って、自分の人生にいろんな変化を起こしたいと思っています。
そしてたくさんの患者さんや家族と出会えてお互いの人生に彩りを加えていける医療職は大変なときもあるけれどとても素敵な仕事かもしれないなと考えるようになりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。