【健康は誰が決めるもの】

今回は、健康をテーマにしたエッセイを紹介します。みなさんにとって健康とはどういうことですか。
そんなことを考えながら読んでいただくと良いかもしれません。


「この前,血圧を測ったら上が150を越えていて下も90以上だったの。これって高血圧だよね?」
「もしかして薬を飲まないといけないかな?」
「でもさ,薬飲むようになったら、すっかり病人だよね.まだ自分が病気持ちになるってことが受け止めきれなくて」

40代半ばの男性の友人から動揺した声でこんな電話がかかってきました.聞けば両親が高血圧で降圧剤を内服しているとのこと. そして妻が自分の健康にとても気遣っていて「その数値では高血圧だから病院に行って診察してもらってきて」と言われているとも話していました。

確かに友人の血圧の数値は高血圧の診断基準を満たしています.

“高血圧とは収縮期血圧(心臓が縮んで血液を送り出したときの血圧。最大血圧)が140mmHg未満、拡張期血圧(心臓が拡張したときの血圧。最小血圧)が90mmHg未満です。このいずれかが上回っている状態が、高血圧です。
(*日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」より引用)”

さて、ここで皆さんに聞いてみたいのです。

“病気とは”そして“健康とは”誰が決めます?

医師? 看護師? 家族? 健康番組の司会者? 本、雑誌? それとも 自分?

そしてここで皆さんに「客観的な健康」と「主体的な健康」という考え方を投げ掛けます.
先ほどの友人の言葉を借りてこれらを当てはめてみますと「この前,血圧を測ったら上が150を越えていて下も90以上だったの.これって高血圧だよね?」 これは高血圧の基準がありますので,客観的に判断されたものですね.

「そうしたら薬を飲まないといけないよね」
これも臨床研究の結果から降圧剤を内服して血圧を正常にコントロールした方が、脳卒中や心筋梗塞などの病気の発生率が下がることが証明されているものです.=客観的な判断ですね.
(ただし飲むか飲まないかは本人次第=主観的な判断)

「でもさ,薬飲むようになったらすっかり病人だよね.なんか,まだ自分が病気持ちになるってことが受け止めきれなくて」では、これは? 薬を飲む=病人,病気持ち.とは主観的な判断ですね.

そしてこれはあるリウマチ患者さんの言葉です.
「わたし,この病気になってからもう20年以上になります.ただふだんは先生たちのおかげで,薬もよく効いて,あまり症状がなく過ごせています.そして,不思議な事に自分が“病気”って思ったことはないのです.」

つまり血液検査やレントゲン,CT,MRI,超音波検査などの客観的な指標に異常があるとかないとかに一喜一憂するばかりではなく,どこまでが健康で,どこからが病気か.そして誰がそれを判断して自分はどう受け入れるか,たまには考えてみてもよいかもしれませんね.

たとえば虫歯は病気ですか?近視は病気ですか?
私はどちらもありますが,“健康”って思っています.そして病に気を取られすぎている患者さんの気持ちが少しでも楽になるように支えて,癒していきたいと思っているのです.

最後まで読んでいただきありがとうございました.
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